【令和8年度税制改正】中小企業向け賃上げ促進税制の見直しポイント)|埼玉県川口市の税理士・会計事務所

COLUMN

2026.04.29

税務検討

【令和8年度税制改正】中小企業向け賃上げ促進税制の見直しポイント

はじめに

令和6年度税制改正で物価高への対応として強化された賃上げ促進税制ですが、令和8年度税制改正大綱において、賃上げの定着状況や政策効果の検証結果を踏まえた見直しが示されました。

大企業向けは適用期限到来前に廃止、中堅企業向けは適用期限到来をもって廃止という大きな改正となる一方、中小企業については「人材獲得競争の中で防衛的賃上げに取り組む企業にも配慮する」という観点から、制度自体は維持されます。ただし、最大控除率の引下げという重要な変更が含まれていますので、本記事では中小企業向けの改正点を中心に整理します。

1. 改正の背景

中小企業においては、大企業に比べて人手不足感が強く、人材確保の観点から防衛的な賃上げを余儀なくされている状況が続いています。こうした状況を踏まえ、中小企業向け賃上げ促進税制については令和8年度は現行制度を概ね維持しつつ、政策効果が乏しいと指摘されていた部分について見直しが行われます。

特に教育訓練費に係る上乗せ措置については、会計検査院の検証で、中小企業向けの場合「教育訓練費に係る上乗せ税額控除の額が教育訓練費増加額を上回る法人」が78.2%(延べ10,681法人中8,356法人)に上っており、政策目的である「教育訓練による生産性向上と賃上げ促進との結び付き」が弱いと指摘されていました。この検証結果を背景に、上乗せ措置の廃止が打ち出されています。

特に、前年より1,000円上乗せして、などの少しの増額を毎年実施している会社が問題となったようです。

2. 中小企業向け 改正の内容

改正前後の比較

項目 改正前 改正後
適用要件 雇用者給与等支給額 ≧ 比較雇用者給与等支給額×101.5% 変更なし
給与等の増加割合 1.5%以上 控除率15% 変更なし
給与等の増加割合 2.5%以上 控除率30% 変更なし
教育訓練費に係る上乗せ措置 10%加算(増加割合5%以上 等) 廃止
子育て・女性活躍に係る上乗せ措置 5%加算(くるみん認定等) 変更なし
最大控除率 45% 35%
控除限度超過額の繰越 5年間の繰越可 変更なし

ポイント①:教育訓練費に係る上乗せ措置(10%加算)の廃止

これまで「教育訓練費の増加割合が5%以上、かつ教育訓練費が雇用者給与等支給額の0.05%以上」の要件を満たすと10%の上乗せ控除が受けられましたが、これが廃止されます。

なお、税制改正大綱には廃止時期が明記されていない点に注意が必要です。今後公表される改正法案や通達等で具体的な適用時期を確認する必要があります。

ポイント②:最大控除率が45% → 35%に引下げ

教育訓練費の上乗せ措置(10%)が廃止されることに伴い、最大控除率は45%から35%へと10ポイント引き下げられます。

子育てサポート(プラチナくるみん・くるみん認定)や女性活躍推進(プラチナえるぼし・えるぼし認定2段階目以上)に係る5%加算は維持されますので、最大控除率35%の内訳は次のとおりです。

  • 基本控除(給与等の増加割合2.5%以上):30%
  • 子育て・女性活躍に係る上乗せ措置:5%

ポイント③:適用要件・繰越制度は維持

適用要件(雇用者給与等支給額が前期比101.5%以上)や、控除限度超過額の5年間繰越制度は維持されます。赤字や控除限度額を超えて控除しきれなかった場合の繰越は、引き続き活用可能です。

3. 適用時期

2026(令和8)年4月1日から2027(令和9)年3月31日までの間に開始する各事業年度が対象となります。

なお、前述の通り教育訓練費に係る上乗せ措置の廃止時期は税制改正大綱では明記されていないため、今後の動向を注視する必要があります。

4. 実務上のポイント

第一に、3月決算法人の場合、2026年4月1日以後開始事業年度から改正後の制度が適用されます。年度をまたぐ事業年度においても適用区分の確認が必要です。

第二に、教育訓練費の上乗せ措置が廃止されることで、これまで人材育成投資を積極的に行ってきた中小企業にとっては税負担増となる可能性があります。ただし、教育訓練投資自体は生産性向上や人材定着の観点から引き続き重要ですので、税制とは切り離して中長期的な視点で検討することが望まれます。

第三に、子育てサポート・女性活躍推進に係る上乗せ措置(5%加算)は維持されるため、未取得の認定がある場合は取得を検討することで税額控除の上積みが可能です。

第四に、所得税(個人事業主向け)についても同様の改正が入る予定ですので、青色申告の個人事業主の方も同様の対応が必要となります。

第五に、中小企業向け賃上げ促進税制については、令和8年度は現行制度を維持したうえで、適用期限到来時(令和9年3月31日)に適用状況等を踏まえ必要な見直しを検討するとされています。令和9年度以降の制度のあり方は不透明であり、今後の改正動向にも引き続き注意が必要です。

5. まとめ

中小企業向け賃上げ促進税制については、大企業・中堅企業向けが廃止される中で制度自体は維持されますが、教育訓練費に係る上乗せ措置の廃止により最大控除率が45%から35%に引き下げられる点が最大のポイントです。

賃上げを実施されている、あるいは賃上げを検討されている中小企業の経営者・経理ご担当者様におかれましては、改正後の制度を踏まえたシミュレーションや、子育てサポート・女性活躍推進の認定取得の検討など、早めの対応をご検討ください。

 


 

※本記事は令和8年度税制改正大綱に基づき作成しています。今後の法令公布・通達等により内容が変更となる可能性がありますので、適用に際しては最新情報をご確認ください。

記 中山 令和8年4月30日

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