主要取引先(支払先)がインボイス発行事業者でない場合の対処)|埼玉県川口市の税理士・会計事務所

COLUMN

2024.02.07

税務検討

主要取引先(支払先)がインボイス発行事業者でない場合の対処

 

世間を騒がせている適格請求書等保存方式(以下、インボイス制度)ですが、制度開始以降も想定外の事例(ETC利用の場合のインボイス、金融機関の振込手数料等のインボイス等)があるなどで、国税庁よりQA方式で補完がされております。

今回のコラムは、導入決定当初より特に建設業者で議論し続けられている論点です。
「外注先などの主要支払先が免税事業者でインボイスの発行ができない場合どのように対応すべきか」

とても難しい議論ではありますが、単純に取りうる手段としては主に以下になると思います。
①従来のままの請求金額・消費税額で請求を受け、とりあえず令和8年9月までは8割控除を利用する
②従来のままの請求金額であるが、消費税法の建前通り、消費税は請求しないでもらう
③経過措置の8割控除を適用した上で、消費税の納付税額が増える分、損のないよう請求金額を下げてもらう
④取引をやめる

ここで注意をしなければならないのは、正取引委員会より令和5年8月の発表において、②④に関しては公正な取引上問題がある旨の通知が出ていますので、NGという認識が必要です。もし一方的に②④を進めてしまうと、後日の公正取引委員会からのアンケート等で発覚し、社名公表等の措置も考えられます。

そうしますと、通常は、①③で対応される会社が多いように思われます。特に、令和8年9月までの経過措置(8割控除)が適用可能な時期までは、この流れが主流になるでしょう。

当社の関与先法人でも③を採用されたいとする場合が多いです。ここで、③経過措置の8割控除を適用した上で、消費税の納付税額が増える分、損のないよう請求金額を下げてもらう場合に、どの程度下げて良いか(公正な取引上問題がないか)という問題になろうかと思います。

結論からお伝えしますと「元値を1.02で割った金額で消費税10%の請求をしてもらう」程度が公正であろうと考えられます。

例えば、①本来の元値10,000円 ②消費税額1,000円の場合
支払側の会計処理
外注費10,000円    / 買掛金11,000円
仮払消費税等1,000円 /

この場合、以下の通りです。
■従来
仕入税額控除1,000円
消費税納付税額減1,000円
法人税納付税額減3,000円(税率30%)
合計減額4,000円

■8割控除の場合
仕入税額控除800円
消費税納付税額減800円
法人税等納付税額減3,060円(税率30%)
合計納付税額減3,860円 →140円の損

これに対して元値を1.02で割った金額で請求があった場合
支払側の会計処理
外注費9,999円    / 買掛金10,783円
仮払消費税等784円 /

■8割控除の場合
仕入税額控除784円
消費税納付税額減784円
法人税等納付税額減2,999円(税率30%)
元値の支払減220円
合計納付税額減4,003円

以上の通り、元値を1.02で除した金額に10%の消費税を乗せて請求してもらえば、
従前の税制時と同様のキャッシュアウトが期待できます。これであれば、売上側の収入は減りますが、支払い側に損も得もなく、インボイスを発行できない売上側との取引においては公正なものであると評価できると考えます。

もちろん、支払側の法人所得がどの程度か等によって結論は変わりますが、一般的なモデルとしてご参考にして頂ければと思います。

記:中山

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