2022年ごろからコロナ禍が明けまして、社員旅行を実施されている法人も多いように感じます。
そのような会社から社員旅行の代金が一人当たり○○○○○○円を超えてしまうが大丈夫かどうかのご質問をいただくことがあります。
大丈夫かというのは、税務署が社員旅行として、すなわち福利厚生費として認めるか否かという意味です。この場合、もし福利厚生費として是認されない場合、税務署は当該社員旅行にかかる支出を従業員への賞与として源泉所得税の告知処分をすることになります。
社員数にもよりますが、比較的大きな金額の課税関係が生じるため、会社としては慎重に判断することが求められます。
一般的に、社員旅行で認められる金額は一人当たり10万円までなどという暗黙のコンセンサスがあるようですが、実際はそのような金額を決めている規定はありません。
社員旅行を認める理屈としては、①旅行とはいえ社員旅行であれば従業員の自由は完全には認められない中での実施になる点②一般的には社員旅行の経済的利益は少額③慰安のためのレクリエーションは一般的な行事であるなどで、社会通念上相当と言えるレベル感(少額)なら課税関係を追求しないということになっています。
では、特にここ1年は相当な物価上昇局面が続いておりますが、そのような中で社会通念上相当と言える金額は変わらないのでしょうか。海外ではハンバーガーが一個3,000円など、日本の金銭感覚では考えられない物価上昇がありますから、旅行代の上限は大きな問題になります。
この問題で、大いに参考になるのは、平成22年12月17日裁決です。
結論としては、一人当たり約24万円の旅行代を賞与として認定しています(納税者の負け)。
納税者としては、①これだけで見るのではなく、年間の福利厚生費全額で判断すべき②5年に1回しか実施がなく、年平均で考えると5万円に満たないなどと、納得感のある主張をしたのですが、認められませんでした。
不服審判所としては、①行事ごとで金額を検討すべき②一般的な平均を考慮し、そこから逸脱しているかを検討すべきとしています。
この基準からわかるのは、
①年に複数回行っても認められる可能性が高い(行事ごとに判断すべき)
②一般的な平均額が上がっているのであれば、社会通念上相当といえる金額も上がる
ということになります。
従いまして、今回の論点「社会通念上相当と言える金額は変わるか」については、「当然変わる」と考えて良いでしょう。
では、いくらなら大丈夫かということですが、これに関しては個別具体的に判断すべきだと思います。ただし、平成22年裁決では、「一人一部屋使わせている」「エリアの最高級レストランを使用している」という実態を踏まえて社会通念上相当を超えていると認定していますので、その辺りの実態判断を基準として考えるのと、一般的な社員旅行の平均額をきちんと調べて最終的な判断をすべきだと考えます。ただし、この場合でも出てくるデータは2年前程度の平均値のため、そこに物価変動の係数を織り込んで考えてよいと思います。
ちなみに写真は、関与先様の社員旅行に同行させていただいた時の写真です。さて、どこでしょうか。
記:中山