令和6年度税制改正大綱 解説)|埼玉県川口市の税理士・会計事務所

COLUMN

2024.02.20

税務検討

令和6年度税制改正大綱 解説

 

令和5年12月14日に与党から税制改正大綱が公表されました。
この税制改正大綱は、来年度(たいていの場合は令和6年4月開始以降の事業年度)に適用される新税制の案になります。この案が年明けの通常国会で審議を経て法制化されることになり、通常はこの通りになります。

ここでは、令和6年度の税制改正大綱の概要を示すとともに、主に中小企業で特に関連の高い項目について説明します。

まずは、今年の改正タイトルです。

個人所得課税

所得税・個人住民税の定額減税
扶養控除等の見直し【令和7年度税制改正で決定見込み】
生命保険料控除の拡充【令和7年度税制改正で決定見込み】
住宅ローン控除(子育て世帯等に対する控除の拡充等)
既存住宅等のリフォームに係る特例(子育て世帯特例の新設)の拡充・延長
税制適格ストックオプションに係る優遇措置の拡大 
エンジェル税制 
公益信託制度改革等に伴う所要の措置

資産課税

事業承継税制 特例承継計画等の提出期限の延長 
住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置の延長等 
土地に係る固定資産税の負担調整措置及び条例減額制度の延長

法人課税

賃上げ促進税制 
戦略分野国内生産促進税制の創設 
イノベーションボックス税制の創設
中小企業事業再編投資損失準備金の拡充(中小M&A税制) 
交際費等の損金不算入制度の延長・拡充 
外形標準課税における対象法人の見直し

国際課税

国際最低課税額に対する法人税等の見直し(グローバルミニマム課税)

消費課税

国外事業者に係る事業者免税点制度の特例の適用の見直し等 
高額特定資産を取得した場合の事業者免税点制度等の適用制限の見直し

以上が、今年のタイトルになります。
まずは、中小法人で最も影響しそうな項目から解説します。

①賃上げ促進税制 

従来より特に黒字企業において、多く活用されてきました。
内容としては、前事業年度より多くの給与を従業員へ支払った場合には、その増えた分の15%〜40%を税額控除するというものです。控除率は、教育訓練費の使用など各種要件に該当すれば多くなります。

今回の改正により、さらにこちらの税制が使いやすくなりました。
従来から、こちらの賃上げ促進税制は黒字企業だけが適用しやすくなっており、そもそも法人税が発生しない赤字企業では使用できないということが問題になっておりました。黒字企業は、このような税制がなくても費用計上による法人税減額という期待から賃上げをする場合が多く、赤字企業では賃上げの期待は少なかったためです。

今回の改正によって、赤字企業について当該事業年度で使用できなかった税額控除分を翌事業年度以降5年間繰り越せることになります。すなわち、当該事業年度で例えば50万円の税額控除が可能だったが赤字のため税額控除できない場合には、翌年度以降の法人税額から50万円を控除できることになります。

また、税額控除率が40%から45%へ上がっていることと、教育訓練費の要件が緩和されていることも納税者有利になっております。

なお、大法人については、納税者不利の方向で改正されております。

交際費等の損金不算入制度の延長・拡充 

こちらは、特に交際費等が800万円を超えるような景気のよい中小法人において朗報です。
従来一人あたり5,000円以下の飲食費については交際費等から除外できておりましたが、令和6年4月1日に支出する飲食代については一人当たり10,000円以下のものについては、会議費として交際費等から除外することが可能です。

気を付けるべき点として、会議費として処理するためには、当該飲食に誰が参加しているかを記録する必要があること、また、令和6年4月1日を含む事業年度については二つの基準が混在することになるため、社内ルール整備等が大切になります。

こちらも法人にとっては減税方向の改正になりますので、会社にとって事務処理手間は増えますが、積極的に使用したい制度です。

今回は、特に中小法人にとって影響が出そうな法人課税の改正予定項目をご説明しました。

記:中山