遺言とよくあるトラブル(公正証書遺言のすすめ))|埼玉県川口市の税理士・会計事務所

COLUMN

2024.07.31

その他

遺言とよくあるトラブル(公正証書遺言のすすめ)

 

ここ1,2年は、遺言のご相談を頂くことが多くなりましたが、その一方で結構な資産家でもお聞きすると遺言を残されていない方が多くいらっしゃることに驚くことがあります。

世間では、遺言はお亡くなる直前に「あの土地は長男にやる。預金は母さんにやってあげてくれ」などとご親族に囲まれながら伝えるものというイメージがあるのかもしれません。

しかし、実際にお亡くなりになる際にそこまでお元気なことは多くないようですし、仮に言葉を残せたとしても法律の世界ではその言葉通りの遺産分割協議が整って初めて実現するということになります。

遺言は、それまでに人生をかけて築き上げた財産や大切なご先祖から受け継いだ財産の渡し先を意思表示し、その人の気持ちを実現する大切なものです。また、遺言が無いために相続財産が上手く分けられず(土地や建物など金銭以外のものは意外と分けづらいものです)、相続人間で骨肉の争いに発展することもとても多いようです。

「相続税が課税される財産が無いから大丈夫」ということではなく、大きくない財産であっても残された相続人は不平等を感じたくない等の気持ちが働きますから、遺す方がしっかりと決めておいてあげることが相続発生後に相続人が仲良く生きていけるカギになると思います。

遺言の一般的な形式

遺言は、法的にいくつかの作成方法が認められており、その作成方法によって法律効果が発生するための手続き等が異なります。まず、類型としては以下の3つがあります。

①自筆証書遺言
②秘密証書遺言
公正証書遺言

内容について、ここでは詳しくは述べませんが、①自筆証書遺言②秘密証書遺言は、公的機関に関係なく作成できるという点で気楽ではありますが、きわめて厳格な様式が決められており、特に加除訂正については厳格な方式が必要です。相続発生後に家庭裁判所の検認が必要で、効力が争われることがしばしばあります。

遺言の効力が争われた裁判事例

ここで自筆証書遺言にはトラブルが多いと知っていただくため、自筆証書遺言等で効力が争われた事例をご紹介します。

①他人の補助を受けて(手を添えて)作成した遺言が偽造と争われた事例(最高裁昭和62年10月8日第一小法廷判決)
概ね本人の震えるような筆跡の中、きれいな字が混在していたため偽造されたものとして争われました。
この裁判で自筆であるか否かの基準も示された興味深い事例です。最終的には、便せん4枚中22行分がきれいな字で書かれており、本人の意思が確認できないことから無効とされました。

 

②被相続人の手書遺言が2通見つかり、どちらが有効か争われた事例(東京高裁平成14年8月29日判決)
前後の遺言がある場合、後の遺言から見て前の遺言に抵触する場合は、当該部分について前の遺言が無効になります(民法第1023条第1項)。
本件では、第二の遺言が被相続人の希望を述べたものにすぎないため、無効とされてしまいました。

 

③認知症の被相続人が作成した遺言書の有効性が争われた事例(東京地裁平成10年6月12日判決)
残念ながら、医師の立会い等もない中で作成された遺言であったため、遺言能力がないものとされ無効となってしまいました。

 

④高齢者が温泉旅行に連れられた書かれた遺言の効力が争われた事例(東京地裁平成18年7月25日判決)
温泉旅行に連れて行った一人に有利な遺言であったことや、遺言時に90歳という高齢であったことなどから、無効とされました。個人的には、妥当な判決であろうと評価できると考えてはおります。

 

以上の通り、その遺言作成時の能力・場所・状況・内容すべてが有効性の基準として判断されるのが自筆証書遺言です。確実に最後の意思表示をすべき遺言に対して、あまりに不確かな方法であろうと思われます。

公正証書遺言のすすめ

もちろん、急な危篤状況で公正証書遺言作成に間に合わない等、特別な場合ではとても有効な手段であるとは思いますが、通常はやはり③公正証書遺言で進めるべきでしょう。簡単に公正証書遺言のメリットをお伝えしますと以下の通りです。

①形式面で無効になることがほとんどない
②病気等で字が書けない人や言葉が不自由な人でも問題ない
③公証人が保管してくれるので、紛失の恐れがない
④検認の必要がなく、内容面での異議が抑えられる
⑤検認の必要がなく、登記などの手続きがすぐに可能

中山&パートナーズに公正証書遺言の作成関与をご依頼された場合の流れ

ちなみに、中山&パートナーズでは公正証書遺言の作成もお手伝いしております。
公正証書遺言作成の通常の流れは、以下の通りです。
①遺言したい財産を整理する(被相続人と中山&パートナーズ)
②どの財産・負債を、誰に相続させるかを決める(被相続人と中山&パートナーズ)
③遺言の内容を決める(公証役場と中山&パートナーズ)
④遺言内容を確定し、被相続人の合意を得る(被相続人と中山&パートナーズ)
⑤遺言日を調整決定する
(公証役場と被相続人と中山&パートナーズ)
⑥遺言日に公証役場へ赴き、遺言作成する
(公証役場と被相続人と中山&パートナーズ)
 ※中山&パートナーズから証人を2名出します
⑦ご要望がある場合、相続発生後に遺言の存在を相続人にお伝えします(中山&パートナーズ)

この他、本業である相続税対策などもお受けしております。
相続に関するご相談はこちら

記 中山

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