二次相続シミュレーションとは
相続が発生しますと、相続税申告の前に原則として遺産分割を進める必要があります。この遺産分割の方法によって(すなわち、どなたがどの程度相続するかの決定によって)、相続税の税額が大きく変わります。1回目の相続だけ考えても、配偶者控除、小規模宅地等の特例の適用可否が属人的な要素を適用要件とするため、税額が大きく変動します。さらにご夫婦がその法定相続人であるお子様に財産を残す場合、先に亡くなった場合の相続を一次相続、残された一方の方が亡くなられた場合の相続を二次相続としたときに、二次相続までのトータルの相続税額も、一次相続の遺産分割協議によって大きく変動します。
前置きが長くなりましたが、上記のように二次相続までの合計相続税額を減らそうと考えたときに、二次相続税額シミュレーションが必要になります。いわずもがなですが、これは一次相続の際に限られる論点です。ちなみに、二次相続に関する相続税法の規定は、相続税法第20条(相次相続控除の規定)で登場するものです。
二次相続シミュレーションが必要なくなる場合
もちろん、①相続人間で争いがあるとき、②前妻の子と、後妻が相続人とき、③配偶者が自身の相続分を主張するとき、④遺言があるときなどは、二次相続シミュレーションは必要がない場合が多いです。
通常、相続人になる方は相続に慣れているわけではないため、一次相続の際に二次相続まで検討が回らず、二次相続が発生した段階で、「よく考えれば一次相続で別の分け方をしていれば二次相続の際の税額をもっと下げられた」ことに気づくことも多いようです。
二次相続シミュレーションの事例
この記事では、この二次相続シミュレーションがどれだけ大切かを具体的な数字を挙げてお伝えしたいと思います。
例1 配偶者の財産がほぼ無い場合
被相続人:夫 相続人:妻、長男、長女 相続財産:3億円 妻の固有財産:1,000万円
かなり多く見られる事例です。この場合、結論からお伝えすると、以下の通り一次相続の税額+二次相続の税額の合計は、5,720万円~8,921万円まで約3,200万円も変動します。
■一次相続での配偶者取得割合0%の場合
一次相続税額:5,720万円 二次相続税額:0円 合計税額5,720万円
■一次相続での配偶者取得割合50%の場合
一次相続税額:2,860万円 二次相続税額:2,140万円 合計税額5,000万円
■一次相続での配偶者取得割合100%の場合
一次相続税額:2,669万円 二次相続税額:6,252万円 合計税額8,921万円
例2 配偶者の財産の方が多い場合
被相続人:夫 相続人:妻、長女 相続財産:7,000万円 妻の固有財産:2億円
割と少なくない事例です。この場合では、以下の通り一次相続の税額+二次相続の税額の合計は、5,180万円~7,830万円まで約2,650万円も変動します。
■一次相続での配偶者取得割合0%の場合
一次相続税額:320万円 二次相続税額:4,860万円 合計税額5,180万円
■一次相続での配偶者取得割合50%の場合
一次相続税額:160万円 二次相続税額:6,260万円 合計税額6,420万円
■一次相続での配偶者取得割合100%の場合
一次相続税額:0円 二次相続税額:7,830万円 合計税額7,830万円
二次相続シミュレーションの留意点
原則として、前提条件にもよりますが、税額だけをみれば、全体の税額が少なくなるケースは配偶者の法定相続分を下回ることが多いです。しかし、配偶者の気持ちとしては当然ですが、被相続人の財産の蓄積に少なからず貢献したという自負もありますから、税務上の合理性だけを考えてしまうとご自身の相続分を主張されるケースもあろうかと思います。
税理士としても、配偶者の心の機微を察しながら、配偶者の気持ちにも寄り添って提案のタイミングや提案内容等を熟考しなければならない論点です。
記 中山
二次相続シミュレーションは、二次相続の際に適用できる属人的な控除も検討する必要があり、大変難解です。お困りの場合は、是非中山&パートナーズへご相談ください。