経営がまずそうなゴルフ会員権は早く売る!?-ゴルフ会員権の譲渡損失通算-)|埼玉県川口市の税理士・会計事務所

COLUMN

2024.11.12

決算申告

【所得税】ゴルフ場会員権の譲渡損失通算

 

久しぶりの更新となってしまいました。
確定申告時期も近づいてきたこともありますから、少しずつ更新を増やしてまいりたいと思います。

ゴルフ場会員権の現状

今回はゴルフ会員権の譲渡損失通算に関する記事です。最近はゴルフブームが少し盛り上がってきておりますが、バブル崩壊後、経営の厳しいゴルフ場が多くあり、会社更生法等が適用されたり、施設そのものが競売等にかけられたという事例も種々あります。

ゴルフ場会員権譲渡の税務

税務的には、個人がゴルフ会員権を破産するまで保有していた場合には、無価値になってしまいますが、一定の条件下においては売却することで、不動産所得・事業所得・農業所得と損益通算することが可能になります(所得税法69条)。

例えば、事業所得で3,000万円ある納税者が、3,000万円で購入したゴルフ会員権を1万円で売却し2,999万円の損失を計上した場合に、それぞれを通算しまして、3,000万円-2,999万円=1万円の総所得金額となり、所得税・住民税が課税されないということになります。
一方で、売却できた場合に条件を満たさない場合には、譲渡損失と認定されないということもあります。

ゴルフ場会員権譲渡損失に関する事例

そこで、どのような場合に譲渡損失が容認されるかを過去の裁決例から検討したいと思います。

事案分析 平成19年5月31日裁決(納税者勝利)

■事案

納税者Xが入会金309万円、保証金900万円を預託し購入したゴルフ会員権を平成16年12月5日に10万円で譲渡し、所得計算上、当該譲渡損失を通算して申告をした事例です。

当該ゴルフ場は、E社がその土地・施設を所有するもので、E社はF社へその運営を委託していました。
残念ながら、運営が立ち行かなくなり、破産申立ての後、E社は当該ゴルフ場の一部の土地・施設をV社へ納税者Xがゴルフ会員権を売却する7ヶ月前の平成16年5月に売却しました。

その後も施設の一部は、従前通りF社により運営されていましたが(土曜杯などの会員を対象としたコンペ開催など)平成17年1月にゴルフ場は閉鎖となります。

■税務署長の主張

納税者Xが会員権を譲渡した平成16年12月には、当該ゴルフ場を優先利用する権利は消滅しており、Xには預託金返還請求権のみ有する。そのため、譲渡所得の起因となる資産はないのであるから、譲渡損失としての損益通算は認められない。

■納税者の主張

当該ゴルフ場では譲渡をした平成16年12月まで、会員として支障なくプレーができており、また土曜杯などの協議会も開催されていた。その他種々の事実から推認すると、ゴルフ会員権に内包された優先的施設利用権及び預託金返還請求権は存続していたのであるから、譲渡損失は認められるべきである。

■審判所の判断

譲渡所得の起因となる資産として認められるためには、当該ゴルフ会員権について優先的施設利用権が存続していたことが必要である。そして、存続していたと認められるためには、以下の2点が認められなければならないと判示します。

①F社によるゴルフ場の運営・管理の法的根拠である委任契約の存在

②実際にゴルフ場の営業を行なっており、会員に対して、社会通念上ゴルフ会員権の目的を達成できる程度にまで、ゴルフ場施設をその利用に供することができていたこと。

上記を事案に当てはめると、いずれの要件事実も認められることから施設の優先利用権が消滅していたとは言えず、譲渡損失として損益通算ができるものと判断されました。

類似事案

1.平成9年5月30日裁決(納税者負け)

ゴルフ場施設が競売等により他の所有になったことによって、ゴルフ場施設優先利用権が消滅したと認められるから、譲渡損失を他の所得と損益通算することはできないとした事案。

2.平成13年5月24日裁決(納税者負け)

ゴルフ場の敷地及び建物が競売により第三者の所有となり、かつ会員権に係る債権債務が新所有者に引き継がれていないことなどから、従前の会員に対して、本間ゴルフ場施設を利用さえることができなくなった場合には、優先利用権は消滅したものと解される。

検討

最終的に不服審判所は、ゴルフ会員権に内包される優先的施設利用権を重要視し、それが認められればゴルフ会員権を資産と判断し、譲渡損失が認められ、優先的利用権がなくなってしまっている状況で譲渡したのであれば、資産性がない以上は譲渡損失を認めないという立場のようです。

とすれば、昔個人で購入された会員権について、ゴルフ場の経営が芳しくない場合には、優先的施設利用権が認めれる時点で1円でも良いので売却することが税務上は合理性がありそうです。もちろん、そのゴルフ場が大好きだから一蓮托生でということであれば、それはそれで素敵なことです。

なお、この議論は個人で購入されたゴルフ会員権が射程範囲で、法人で購入した場合には当然に法人の損失として認容されますから当たりません。

いずれにしても(法人でも個人でも)、売却してから税務調査までは期間が開きますから、当時のゴルフ場の運営状況に関して、記録を丁寧にとっておくことで当局との話し合いもスムーズに進められるものと思います。

記 中山

 

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