近年の倒産件数
商工リサーチ社によりますと、令和6年度の倒産件数は10,006件でした。これは、前年の8,690件と比較して約15%の増加となります。
倒産件数も増えていることから、中小事業者の経営環境は悪化しているものと考えられ、倒産に至らない事業再生手続きに入る会社も相当数に上っているのではないかと思います。
リスケの判断基準について
事業再生手続きにおいては当然に金融機関へリスケジュール等の協力をお願いすることになるのですが、今回はその際の金融機関の判断基準を解説したいと思います。
事業再生手続きにおいては、通常事業再生計画に基づいた弁済計画案を策定の上、金融機関とのバンクミーティングを実施します。その際、当該弁済計画を債権者である金融機関が是とするか否かは、「経済合理性」をもとに判断するということになっております(中小企業の事業再生等に関する研究会資料より)。
「経済的合理性??とは???」と言いたくなるほど漠然とした言葉ですが、同資料を読み解きますと経済的合理性の定義はズバリ以下の通りです。
経済的合理性とは
:その時点で清算・廃業・倒産した場合の債権回収額よりも弁済計画案に基づいて回収できる金額が高いこと
要は、その時点で倒産するよりも、リスケなどで助けた方が回収額が高まるということです。この経済的合理性を示すために、事業再建計画を策定し、金融機関に納得してもらう必要があります。
事業再建計画について
事業再建計画を策定は、損益計算書だけではなくそれと連動する貸借対照表、キャッシュフロー計算書も作る必要がありますが、ポイントとしましては、これまでの実績値をならべるのではなく、少なくとも金額の大きな科目については数字の積み重ねになるよう、それぞれの根拠資料を作成すべきでしょう。
売り上げは、この構成比でこうなる、そうすると外注費は、、仕入れは、、人件費は、、という具合にそれぞれが詳細であればあるほど納得感が高まります。
なかなか難しい作業ですが、その結果リスケの経済的合理性が示せるでしょう。
事業再生計画で示すこと
事業再生計画で示すべきは、端的にお伝えしますと以下の2点です。
①清算価値<②返済計画
①清算価値
清算価値は、現時点で会社清算を実施した場合に残る価値です。それを債権者に債権額の割合を乗じたものが、各債権者(金融機関)にとっての清算価値といえると考えます。
清算価値を算出する場合に注意しなければならないのは、当該時点の貸借対照表に記載の資産および負債を時価評価に換算する必要があります。
また、もし簿外資産・簿外負債があるのであれば(例えば、費用処理しているセーフティ共済預け金など)、それも正しく反映させ時価修正の貸借対照表をベースとした清算価値を算出する必要があります。
②返済計画
返済計画は、前述の事業再生計画通り進んだ場合に創出されるCFを各債権者へ返済する計画です。その返済額に債権者の債権額の割合を乗じた金額が、各債権者がリスケを許可した場合に得られる返済ということになります。
以上の①清算価値より②返済計画に基づく返済予定額が上回れば、債権者としてはリスケが合理的と判断する方向になります。
ぜひ参考になさってください。
記 中山