税務調査について
令和7年4月に入りました。この時期は、税理士事務所では確定申告も終わり、税務調査も少なく、比較的落ち着いたホッとしているところが多いのではないでしょうか。
一方で税務署ではここからは異動の時期となり少しあわただしく、7月ごろから税務調査が再び活況となってまいります。
税務調査に関しまして国税庁の発表によりますと、令和4年の法人税実地調査件数62千件、令和5年の法人税実地調査件数59千件と、令和5年は件数は減少となりましたが、一件当たりの追徴税額は令和4年5,241千円、令和5年5,497千円と105%と増額でした。
一件当たりの追徴税額平均はいずれも5百万円を超えており、中小法人(とりわけ小法人)では驚いてしまいますが、大法人も含めての計算になりますので、その辺りはご安心(?)ください。
いずれにしても、活発な税務調査が行われており、一定割合は納税者と当局の意見が相違することがあり、揉める事も多くなっているのではないでしょうか。
中には、議論の収拾もつかず、「裁判だ~」となっている事案も相当数あることは想像に難くありません。
そこで今回は、税務調査で見解の相違がある場合の不服申立て制度を中心に記載をします。
不服申立制度の概要
まず、一般論として不服がある場合の救済制度の概要をお話しします。
税務調査で不服がある場合には、原則として修正申告には応じないということになろうと思いますが、その場合には、税務署長は、税務調査で当初申告の計算に誤りがあると認めるものとして、職権で税額を決定することができますので、課税決定を行うことになります(国税通則法24条)。
納税者は、当該決定に関する通知を受けた日の翌月から3か月以内に、国税不服審判所へ審査請求書を提出し審査請求をすることができます(国税通則法75条)。これは、一般に言う裁判ではなく、行政法上の不服申立制度の一環(税務版)です。税務訴訟を提起する場合には、必ずこの不服申立を前置しなければなりません。
税務署長への再調査請求
この審査請求の前に、オプションとして当該決定をした税務署長に再調査の請求を申し入れることも可能です(同法同条)。この場合における審判所への審査請求は税務署長の再決定があった日の翌日から1か月以内が審査請求期限です。再決定があった日の応当日(12月15日に決定があれば、1月15日)ですね。
当該課税決定をした税務署長が再調査をしても意味がないのではと思われるかもしれませんが、例えば決定において明らかな違算がある場合や新たな証拠が見つかった場合には意義があるでしょう。再調査は3か月程度で終わる一方、不服審査は通常1年程度かかっているようですので、再調査で済むのであればそれが良いと思います。
審査請求の考え方
国税不服審判所の審判官は、以前は財務省・国税庁出身者がほとんどでしたが、現在は弁護士、税理士等の民間登用も多くなっており、納税者の申立てが認容されるケースも増えてきました。それでも納税者の主張が認容される確率は令和5年で9.7%とまだまだ低いですが、どうしても納得がいかない場合は、選択肢として検討すべきでしょう。
不服申立制度は、一般的に「お国にたてつくなんて」と敬遠してしまうことが多い制度であるとは思いますが、過去の税務訴訟をみても、納税者が正しかったということも多々ありますし、公正適正な税務行政を官と一緒に作っていくという大きな視点で、日本国を信じて制度を活用することも必要です。
もちろん、納税者としても襟を正した申告・税務調査対応をしたうえで、それでもどうしてもという場合に限ることは必要です。
そこで次の記事では、当局と見解の相違が発生した場合に、税務調査で説得すべきか、不服申立をすべきか、不服申立をするとしてその税務調査における留意点は何かをお話しします。
記 中山