使途秘匿金課税)|埼玉県川口市の税理士・会計事務所

COLUMN

2025.04.14

税務検討

使途秘匿金課税

使途秘匿金課税とは

使途秘匿金課税は、租税特別措置法に規定される課税関係です。
具体的には、相手方を明らかにしない金銭の支出または資産の引き渡しをした場合には、当該金額の40%に相当する法人税を支払うという制度です。また、当該支出金額そのものも損金不算入となります(租税特別措置法62条)。

この記事では、どのようなケースで使途秘匿金課税が適用されるか、その分水嶺を事例を用いて記述したいと思います。

秘匿金課税が論点になるケース

さっそくですが、以下の前提事実がある場合に、それぞれ秘匿金課税の課税関係はどうなるでしょうか。

ケース1

芸能事務所を運営する法人である納税者が、自社所属のアーティストに作品盗作の疑いがかけられた。社内で検討したところ、曲の主要部分がほとんど同じ旋律となっており盗作と言われても仕方ない状況である。
そこで、盗作された側のアーティストが懇意にしている業界の大物に今回の件を穏便に済ませるよう働きかけてもらうため、500万円を支払った。
当該500万円については、業界の大物の指示により名前を出さず交際費として処理したが、帳簿や申告書において支払先を明らかにすることはなかった。
税務調査が入り、当該500万円は秘匿金課税と認定する旨調査官が伝えてきたが、納税者は調査官に大物の名前を明らかにしたことで、交際費等として認めてもらいたいと考えている。

ケース2

建設業者である法人(納税者)は、請負先元請会社の現場監督の歓心を買うため、当該現場監督に対して高級焼肉をご馳走し、またゴルフに招待した。当該飲食費とゴルフプレイ費を現場監督の名前を出すことなく、交際費として処理している。
税務調査委において調査官が、名前が出ていない以上は秘匿金課税として損金否認の上、当該金額の40%を課税処理すべきと主張した。

見解

答え合わせですが、秘匿金課税に関する論点だけでお伝えしますと、ケース1の場合には、遅くとも申告書提出時までに相手先を明らかにしなければならないことになっております(措置法施行令38条2項)から「秘匿金として課税」が正解です。
ケース2に関しては、条文上「金銭の支出(贈与、供与その他これらに類する目的のためにする金銭以外の資産の引渡しを含む。)のうち、相当の理由がなく、その相手方の氏名」等を明らかにしないとなっており、事例は相手方への金銭の支出でも資産の譲渡でもありませんから、秘匿金課税の対象にならないと考えます(実務もそのように運用されております)。
ただし、本件においてはそもそも損金性の問題は発生するかもしれません。

いずれのケースも、特に新たに市場参入するような零細な建設業者や民間事業者の感覚とそのような感覚が一切ない国税調査官のずれが一番大きい論点かもしれません。

記 中山

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