ビジネスオーナーの交際費の範囲(算入可否))|埼玉県川口市の税理士・会計事務所

COLUMN

2025.05.01

税務検討

複数ビジネスオーナーの交際費の範囲(算入可否)

複数事業のビジネスオーナーにかかる必要経費算入可否に関する裁判例

令和7年5月になりました。関与先法人の方や銀行の方とお会いしましても、皆さんGWの予定を楽しみにされており、話がはずみます。

今回の記事は、複数の事業を手掛けるビジネスオーナーの費用算入可否について学びの多い裁判例が出てきましたので、数回に分けて種々の論点を記載してみたいと思います。

この記事を読まれる方におかれましても、複数の事業をお持ちで、どの事業の経費になるのか迷われるケースもあるのではないでしょうか。

今回、大阪地裁令和6年3月13日判決(令和4年(行ウ)第60号)を取り上げますが、こちらの判決は以下の論点にまたがる興味深い判決です。
①複数の事業を行っている個人事業主の交際費必要経費算入可否
②複数の事業を行っている個人事業主の減価償却費必要経費算入可否
③不動産賃貸業を行っている個人事業主が、事業用不動産を自己が支配する法人へ一括賃貸した場合の賃料設定
④前回の税務調査で是認通知を受けた場合に同様の処理をした次回調査で更正処分を受けたときの禁反言の原則妥当範囲

いずれも実務でよくあるケースで関心度の高い判決ではないかと思われます。

事案内容は、以下の事案概要の通り、司法書士としての個人事業をされていた方が別に不動産賃貸業と当該不動産を転貸する法人運営をされており、個人事業の必要経費と法人の損金算入にまたがるケースです。
必要経費の定義(所得税法第37条第1項)と公正処理基準を採用する法人税法上の損金の定義(法人税法第22条第4項)の違いから複数法人を保有するビジネスオーナーの損金計上の判断基準としては若干当たらない部分もあろうかと思います。

だだし、この記事の後にご紹介する④前回の税務調査で是認通知を受けた場合に同様の処理をした次回調査で更正処分を受けたときの禁反言の原則妥当範囲は、法人個人問わず妥当するものと言えます。

前提が長くなってしまいましたが、まず事案の概要は次の通りです。

事案

納税者は、司法書士業を営むとともに、自己所有の不動産を賃貸して賃貸料を得る不動産賃貸業も営みます。不動産の賃貸先は自己が保有する法人へ100%貸し付け、法人から毎月定額の賃料を得ています。
当初の確定申告内容は、以下の通りです。
平成27年分(総所得2,897万円、事業所得▲2,494万円、不動産所得4,112万円)
平成28年分(総所得541万円、事業所得1,571万円、不動産所得1,156万円)
平成29年分(総所得▲674万円、事業所得▲1,736万円、不動産所得285万円)

また、調査結果に基づく税務署長の公正処分内容は以下の通りです。
平成27年分(総所得1億1,382万円、事業所得▲1,022万円、不動産所得1億1,114万円)
平成28年分(総所得5,805万円、事業所得▲441万円、不動産所得5,289万円)
平成29年分(総所得3,578万円、事業所得▲508万円、不動産所得3,310万円)

なお、司法書士業の各年度の売上は、平成27年192万円、平成28年463万円、平成29年360万円です。一方で、不動産賃貸をする会社の売上総利益は平成27年4億5,134万円、平成28年4億5,711万円、平成29年4億5,991万円で、司法書士業よりはるかに大きな不動産ビジネスを手掛けていたようです。

数字だけを見ても、かなりシビれる税務調査内容であったと思われ、また、必要経費の算入も相当過激な内容であったと推測できます。税務当局としては当然法人の経費や家事費が必要経費に算入されていないかを中心に税務調査を実施することは明らかでしょう。

国の主張(要旨

納税者は、事業収入を上回る交際費を必要経費として算入しており、また接待回数が週3回にのぼり、必要経費とは認めがたい。司法書士業の事業規模に比べて不動産賃貸業の事業規模が相当に大きく、不動産賃貸業の接待交際にかかる支出を事業収入の必要経費として申告したものとしか考えられない。

納税者の主張(要旨)

交際費の必要経費該当性については、業務関連性・必要性を厳格に解すべきではなく、事業関係者との交際であることや、業務全般の円滑性に寄与していること、業績とのバランスを失していないことを総合的に判断して認められるべき。
今回の接待の相手方は、銀行関係者、代議士、士業関係者等であり、おおむね明らかであることと全体として多額の納税をしていることから、バランスを失していない。

裁判所の判断(要旨)

納税者の負け。
必要経費該当性に関しては、当該所得を生ずべき業務との直接的な関連性、遂行上の必要性で判断する。また、納税者が必要経費、家事費等を明確に区分すべきである。
資料の状況から、各関係者(代議士、銀行関係者、士業等)に対する支出それぞれを検討しても、所得との直接の関連性・業務遂行上の必要性があるとは言えない。

検討

裁判所はやはり各所得区分それぞれに厳格な関連性・遂行上の必要性を要求する判断となりました。また、当該判断をするに際しては、納税者側に適切な証拠保全を求める内容です。
本件については、納税者側の「やりすぎた感」のある事案ではありますが、実際としては個人・法人にまたがる支出は発生するので、実務側の本音を言えば、厳格に過ぎる感はありますね。
しかく裁判所が示す以上は、実務も従う必要があります。個人事業主の交際費支出については、要件が厳しいですから、金額・日付・相手先・内容がわかるようしっかりと準備しなければなりません。
また、複数事業を遂行する(特に個人・法人にまたがる)場合には、どちらの経費・費用になるのかを確実に区分する必要があるということになります。納税者にとってはやや厳しい判決です。

次回は、上記②複数の事業を行っている個人事業主の減価償却費必要経費算入可否について、記載いたします。

記 中山