前回調査の是認通知の次回調査での有効性 概要
前回のコラムで、個人の賃貸不動産管理を自己保有の同族法人へ一括貸し付けした場合の論点を大阪地裁令和6年3月13日判決(令和4年(行ウ)第60号)に基づいて解説しました。
今回は、同判決で争われた論点で、前回調査について申告是認通知が発せられたにも関わらず、同様の事案について更正処分が行われたことの信義則適用について記述します。
信義則とは
原則的な話ですが、信義則とは、「法的関係において一度言ったことは翻さない」ということです。民法1条2項で規定されるものですが、行政法においても一般原則として「それと共通する理念を用いている」ものと解されています(中川丈久.「行政法における『信義則』と『権利濫用の禁止』の概念」.法律時報90巻8号22項)。
さらに、租税法においては信義則の適用要件はより厳しく、以下の5要件が必要というのが学説(品川芳宣.「重要租税判決の実務研究第4版969項)で、実務の運用も同様です。
①税務当局が納税者に対し公的見解を表示した
②納税者がその表示を信頼し、その信頼過程に帰責事由がないこと
③納税者がその信頼に基づき何らかの税務上の行為をしたこと
④税務当局が当初の信頼の対象となる公的見解に反した行為をしたこと
⑤納税者が④の行為により経済的不利益を被ったこと
公的見解の例としては通達が該当します。従いまして、通達に反した処分があった場合には、信義則違反が問題になるのでしょう。
是認通知の公的見解該当性
今回のテーマとしては、前回調査の是認通知が上記①の公的見解の表示に該当するかどうかということになります。
令和6年3月の大阪地裁判決は、昭和62年10月30日最高裁判決(上記①~⑤の要件)を引用し、前回の是認通知は、「あくまでその時点において」「その期間にかかる申告についての」見解に過ぎないとあっさり解説し、信義則違反はないと示しています。
個人的な見解としては、平成23年の税制改正で納税者権利保護のために是認通知制度が整備され、税務署長の義務として通知を出しており、当該申告と同じスキームに対する同じ処理に関しては、公的見解に該当するのでは?というのが率直な印象でした。
平成23年改正を織り込んだ丁寧な議論を納税者ができていなかったのかもしれませんが、今後の裁判例変遷を期待したいところです。
一旦、実務上は「前回調査の是認通知があるから安心」とは考えない方がよいというところでしょう。
記 中山
※令和7年5月時点の諸法令に基づいて記述しています。


