経営者の認知症対策)|埼玉県川口市の税理士・会計事務所

COLUMN

2026.03.15

その他

経営者の認知症対策

顧問先の社長に知っておいてほしいこと――認知症と経営リスクについて

少し前に、ある専門誌でとても気になる記事を読みました。「約8人に1人が発症」という認知症に関する特集で、厚生労働省の推計によれば、2022年時点で認知症と診断された高齢者はなんと443万人。65歳以上の8.1人に1人という割合です。さらに30年後には、高齢者の7人に1人がそうなるという見通しもあります。決して他人事とは言えない数字だと感じます。

そこで、この記事では、会社の代表者が認知症になった場合のリスク等に関して記載をしたいと思います。

社長が認知症になると、何が困るのか

経営者の方が認知症を発症した場合、会社が直面するリスクはおおよそ4つに整理できます。

まず「契約行為の問題」です。認知症によって意思能力がないと判断されると、それまでに交わした契約が無効になることがあります。逆に、押すべき場面で判を押せなくなる、という事態も考えられます。

次に「融資の問題」。銀行との関係は、多くの場合、社長個人の信用が土台になっています。社長が認知症になれば、融資の継続が難しくなるケースも出てきます。

3つ目は「事業承継の問題」。株主総会での議決権を行使できなくなることで、後継者へのバトンタッチが滞ってしまうことがあります。

そして4つ目が「個人資産の管理の問題」です。不動産や預貯金、自社株など、認知症になると法律行為ができなくなるため、財産を動かせなくなります。相続が発生してから慌てて動こうとしても、遺産分割協議がままならなくなることも十分に考えられます。

私自身、お客様の資産プランをご一緒に考えながら、「それが認知症というかたちで一夜にして機能しなくなるリスクがある」という事実には、正直、改めてハッとさせられました。

厄介なのは「いつから発症したか分からない」こと

認知症の難しいところは、発症のタイミングが曖昧であることです。記事では、3億円の寄付が「認知症発症後のものだった」として、遺族が病院に損害賠償を求めた裁判例が紹介されていました。本人がしっかりしているつもりで遺言を残しても、後から「その時点での判断能力」を問われることがある――これは決してドラマの話ではありません。

発症前に手を打つことが何より大切

重要なのは、「なってから考える」では遅いかもしれない、ということです。

具体的な対策としては、民事信託(家族信託)を活用する方法や、自社株に「経営者が認知症になったときは後継者が議決権を持つ」といった制限を設けておく方法などがあります。また、法定後見ほど制約が厳しくない「任意後見」という仕組みを使うことも選択肢のひとつです。

さらに、「認知症保険」という備えも最近は充実してきています。認知症と診断された際に一時金や年金のかたちで給付を受けられるもので、法人契約として会社が保険料を損金計上できる商品も増えています。社長の認知症リスクに備えながら、顧問先の財務にも貢献できる可能性がある点は、ぜひ一度ご検討いただきたいと思います。

あるアンケートによれば、「最もなりたくない病気」として認知症を挙げた方が4割にのぼったそうです。それほど多くの方が意識しているにもかかわらず、実際に何らかの対策を講じているのは2割にも満たない、というのが現状のようです。

顧問先の皆さまには、これまで一緒に積み上げてきた相続対策や事業承継プランが、認知症によって崩れてしまうことのないよう、早めに備えを検討していただけると嬉しいです。何かご不明な点がございましたら、ぜひお気軽にご相談ください。

 

記:中山

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