高額な役員退職金)|埼玉県川口市の税理士・会計事務所

COLUMN

2026.04.03

税務検討

高額な役員退職金

 

さくらの季節になりました。事務所の近くでも少しずつ花が咲き始め、新しい年度の始まりを感じます。

今回は、少し専門的なテーマになりますが、裁判例をもちいて役員退職金について検討します。


社長が亡くなったとき、退職金はどう決まる?

ある製造業の会社で、長年会社を支えてきた代表取締役が亡くなりました。会社は就業規則にもとづいて退職慰労金として4億2000万円を支給し、その全額を経費(損金)として法人税の申告をしました。

ところが、税務署から「その退職金、高すぎませんか?」と指摘が入り、一部について経費として認められないという更正処分がなされてしまいました。会社はこれを不服として裁判になったのです(東京地裁・平成29年10月13日)。


「高すぎる」かどうかの判断基準

役員退職金には、法律上「不相当に高額な部分は経費にならない」というルールがあります(法人税法34条2項)。でも、「高すぎる」かどうかをどうやって判断するのか、実はここが一番の難しいところです。

裁判では、同じような業種・規模の会社が実際に支払った役員退職金を参考にして比較する、「平均功績倍率法」という方法が合理的だと認められました。具体的には、

退職金の相当額 = 最終月額報酬 × 勤続年数 × 平均功績倍率

という計算式です。この会社の場合、同業類似法人5社の平均功績倍率は「3.26」でした。


裁判所の考え方(納税者にやさしめ)

ただし裁判所は、「平均をちょっとでも超えたら即アウト」とは言いませんでした。

平均功績倍率(3.26)の1.5倍(4.89)までの範囲であれば、よほど特別な事情がない限り「相当な退職金」の範囲に収まると判断しました。これは、会社側の事情もある程度斟酌した判示があり、亡くなった代表取締役の方は会社の借金返済や売上増加に大きく貢献されていたことも認められました。その結果、4億2000万円のうち約3億1700万円までは経費として認められ、残りの約1億300万円が「高すぎる部分」として経費否認となりました。


まとめ

この裁判から金額の根拠を事前にしっかり整理しておくことが大切なのですが、裁判所は①県内に納税地を有すること、②日本標準産業分類を基準とすること、③同業の売上金額が原告の本件事業年度売上の2分の1から2倍の範囲内であること、④死亡を理由とする代表取締役の退職と退職給与支給があること、⑤不服申立て・訴訟が係属中、就業規則や退職金規程を適切に整備しておくことの5基準を挙げており、高額な役員退職金を支払たいということであれば、どれだけのデータを集められるかが勝負です。

「うちはどう考えればいいの?」と思われた方は、ぜひお気軽にご相談ください。事前にきちんと備えておくことが、会社と残されたご家族を守ることにつながると思います。

写真は事務所の前にある桜です。今年も綺麗に咲いてくれました。

記:中山

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